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塗料の試験規格を定めた JIS K5600 では、付着性、いわゆる塗膜と基材・素地との密着性や接着性を試験する方法として、クロスカット法(碁盤目試験)とこのプルオフ法が規定されています。
しかし、JIS K5600-5-6 付着性 (クロスカット法) の冒頭に、「この試験方法によって測定された性能は、各要因の中から、下塗りまたは基板いずれかへの付着性に左右されるものである。しかし、この試験方法は付着性の測定手段とみなしてはならない」と明記されています。付着性の測定手段とみなせるのは、「単一塗膜または多層塗膜系に対し、付着性試験で付着強度を求める方法」と規定されているプルオフ法になります。
塗膜のはく離、塗膜のはがれ、塗膜の脱落は最もこわいトラブルです。塗膜の密着強度や塗膜の接着強度に関わる品質管理として、クロスカット法だけに頼るのではリスクが大きすぎるようです。
ISO 4624 / 16276-1, JIS K5600-5-7:2014 (ISO4624 が原規格)
American Society for Testing and Materials/ASTM International: ASTM C1583/D4541/D7234, European Standards: EN 1542/12004-2, Australian Standards: AS/NZS 1580.408.5
測定が失敗に終わる最大の原因の一つ
…それは荷重の芯のズレです
上部の固定部が球状関節形状になっており、それをくわえるクイック固定用のカップリング機能により、荷重の芯のズレを自己補正し、ドリーに偏った荷重がかかるのを防ぎます。これにより変動がなく滑らかにドリーに荷重を加えていくことを実現しています。
塗膜ときには接着剤の影響でドリーの接着面は必ずしも正確に水平になるとは限りません。むしろ、塗膜表面が完全に水平ではないことの方が多いのかもしれません。しかし、プルオフ法試験ではドリー中心軸と引張方向の軸がずれると、検査結果に誤差が生じることが確認されました。
このため、ASTM規格では、軸調整機能のあるものをより高い精度が期待できる方式として、規格に追加しました。
具体的には2つの方法が規格化されました。装置そのものに軸調整機能があるものをSELF-ALIGNMENT ADHESION TESTER TYPE Ⅳ(下図左側)、さらに最新の方式として、ドリーに軸調整機能を持たせたものをSELF-ALIGNMENT ADHESION TESTER TYPE Ⅴ(下図右側)として規格化しました。
アメリカの自動車メーカーなどを中心に、アドヒージョンテスターを用いる際にSELF-ALIGNMENT機能のあるものを使用するように指示している例が増えています。
以下は日本の大手通信事業会社が鉄塔などの設備の塗膜検査の精度を向上させるために行われた一連の実験をまとめて公表されたレポートの一部です。
このレポートで、軸調整機能のあるドリーは、軸調整機能のないドリーを使用した場合に比較して「標準偏差は約1/4になり、測定精度が大幅に良い」と報告されています。