『IMO塗装性能基準 PSPC (Performance Standard for Protective Coatings)』を例に性能基準を見てみましょう
※ISOでは一般に制限値・基準値は示されていません。実際の塗装現場で適用するに当たり各業界の基準・指針がどのように定められているのかを参考にしていただくために掲載しております。実際に本基準にしたがった塗装を行なわれる場合には、予め最新の情報やご専門機関のご見解をご確認ください。
膜厚
項目 | 規定・指針例 | COTECによる補足 | 対象製品のご案内 |
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膜厚 ウェット膜厚 測定個所 |
エポキシベース塗装は、公称乾燥膜厚(NDFT)は320μmで90/10ルールに適合すること。 ウェット膜厚は塗装中定期的に確認すること 平坦な面は5m²ごとに1計測 タンク境界になるべく近く、タンク境界のエッジから15mmを越えない範囲は2~3ごとに1計測 (その他の部位等や詳細についてはPSPC本文をご参照ください) |
90/10ルールとは、すべての測定点においてその90%の値は公称乾燥膜厚(NDFT)以上であり、なおかつ残りの10%の測定点の値は公称乾燥膜厚×90%を下回らないことを指します。 高機能膜厚計では、予め統計機能として90/10%ルールに対応したものがあります。» ガイダンス ブロックごとにデータを管理する必要があるケースでは、バッチ機能を利用し、データの格納個所を分けてください。 <ご注意ください> エッジ部は測定精度が急激に劣る現象 電磁式膜厚計は、エッジや孔部の影響を受けやすく、そ近傍の測定値は精度が劣ると言われています。この現象はいわゆる第2世代の膜厚計で顕著です。対応策としては、第3世代の膜厚計の中にはエッジの影響を抑えた最新モデルがありますのでそれを採用するか、あるいはエッジ部近傍はミニプローブによって測定するかのいずれかの方法が有効と考えられます。 » テストレポート <ご注意ください> 頻繁に精度確認をしてください 「試験場所に装置(=膜厚計)を作動させるたびに、また、使用中頻繁に(少なくても1時間に1回)適切に作動していることを確認するため装置の校正を行なうものとする」とJISには記載されています。 頻繁に適切に作動していることを確認する必要が生じる最大の理由は「プローブの先端摩耗」にあります。プローブの先端は素地などに繰り返し押し当てられますので、先端が摩耗して特性に変化が生じます。その特性の変化を校正により吸収する必要があり、また摩耗が進むとついには測定の再現性が得られなくなり修理や交換が必要になります。ある限界を超えると測定値が表示されたとしても、規定の精度を逸脱したものとなっている可能性が大きくなります。そしていつ限界を迎えるかを予測するのは残念ながら困難です。 頻繁に「適切な作動」を確認することが原則ですが、それでも精度劣化が頻繁に生じては作業に支障が生じます。現実的でたいへん有効な対策として、耐磨耗性性にたいへん優れたルビーチップを採用した膜厚計を採用することが挙げられます。 |
高性能電磁膜厚計 高性能電磁膜厚計 ウェットフィルム膜厚計 |
ブラスト
項目 | 規定・指針例 | COTECによる補足 | 対象製品のご案内 |
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粗さと除錆度 | SA 2 1/2:30~75μmの間とすること。 | JIS Z0313/ISO 8503には「塗装のための素地表面のためのブラスト処理面では…粗さの平均よも最大の粗さの方が重要である。このJISではRaのような平均的な粗さは対象としない」と記されています。 ISOブラスト比較板に示された粗さの表記も最大粗さに基づくものとなっています(区分長さ2.5mmの山谷の最大値(Ry5)を計測し、特異な値にならないようにそれを10区分測定し、その最大粗さの平均を表記しています。Raのような粗さの平均ではなく、あくまで最大粗さに基づく表記となっています)。 したがって30~75μmという規定はRaのような平均的粗さに関わる指標ではなく、最大粗さに関わる指標と解釈されます。 なお、塗料メーカーのカタログ等にはRzあるいはRzjisによりブラストの粗さが表記されている場合があります。Rzは最大高さ、Rzjis(現在の規定にはない旧パラメーター)は十点平均粗さを示します。十点“平均粗さ”とは言っても、Raの算術平均粗さとは大きく異なり、大雑把にいえば基準長さの中の上位5番目までの山の高さの平均と上位5番目までの谷の深さの平均とを足し算しますので、平均ではなく最大粗さに基づく指標になります。どちらのパラメーターで指示されたものでもISOブラスト比較板で評価を行なうことは実用上問題はないと考えられます。 一方でSA 2 1/2は除錆度を示しています。これは粗さには関係なく、ブラスト処理によりどの程度ミルスケール、さび、異物、目に見える油などが除去できたかを示す指標で、『Rust Grade Book』呼ばれるISO8501-1の写真集と比較し評価します。 |
ISOブラスト比較板 さび度 |
結露管理 | 次に掲げる場合にあっては、ブラスト処理は施さないこと。
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問題になるのは、日常で見受けられるコップに付着する水滴のレベルではなく、目に見えないレベルのものです。乾球と湿球温度計を振り回すタイプのものは誤差がたいへん大きくなりがちですのでご注意ください。 |
デジタル結露計 |
ブラスト/グラインダ処理後の素地清浄度
項目 | 規定・指針例 | COTECによる補足 | 対象製品のご案内 |
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塩分濃度 | ブラスト/グラインダ処理後のNaCl(塩化ナトリウム)に相当する塩分濃度は、50mg/m²以下とする。 | PSPC本文を補足するQ&Aでは、「メーカーのテスト機器マニュアルに基づいて全伝導性値からNaClを算出する」という記載があります。右にご紹介するキットの説明書にはその計算手順が記されています。 |
表面付着塩分の測定 表面付着粉じんの測定 ダストテープ圧着ローラー |
ダスト | ダストサイズ:3、4または5の場合にあっては、ダスト量:1とする。 | ダストは次のように定義されています。「ブラスト処理その他の表面処理工程または周辺の活動によって生じた、塗装のために処理された表面上にある固着されていない粒状物質を言う」 |
塗装の環境条件
項目 | 規定・指針例 | COTECによる補足 | 対象製品のご案内 |
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環境条件 | 次に掲げる場合にあっては、塗装を行なわないこと
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問題になるのは、日常で見受けられるコップに付着する水滴のレベルではなく、目に見えないレベルのものです。乾球と湿球温度計を振り回すタイプのものは誤差がたいへん大きくなりがちですのでご注意ください。 |
デジタル結露計 |
補修-ピンホール
項目 | 規定・指針例 | COTECによる補足 | 対象製品のご案内 |
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補修 | ピンホール、気泡、空隙等の欠陥のある場所はマークし、適切に補修すること。 |
ピンホールテスター |
バラストタンク模擬試験の判定基準
項目 | 規定・指針例 | COTECによる補足 | 対象製品のご案内 |
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ピンホール | 90Vの低電圧測定機によるピンホールの数 エポキシベース:0 (代替システム:0) |
ピンホール探知機には湿式と乾式がありますが、低電圧の90Vで使用できるのは濡らしたスポンジで塗膜を検査する湿式になります。 |
ピンホールテスター |
ふくれおよび錆 | ふくれ エポキシベース:0 (代替システム:0) 錆 エポキシベース:Ri 0 (代替システム:Ri 0) |
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層間剥離強度 | エポキシベース:>3.5MPa 母材と塗装、または塗装間の剥離が、破壊面積の60%以上 代替システム:>5MPa 母材と塗装、または塗装間の剥離が、破壊面積の60%以上 |
小型で軽量のデジタル自動方式が開発されてからは、スプリング方式は誤差が大きいため使用が避けられるようになっています。現場での精度確保のためにドリーの角度補正機能は必須です。 | 全自動プルオフ試験機 |
層内剥離強度 | エポキシベース:>3MPa 塗装内の層内破壊が、破壊面積の40%以上 代替システム:>5MPa 塗装内の層内破壊が、破壊面積の40%以上 |
全自動プルオフ試験機 |
参考補足検査機 船体表面粗さ『ハルゲージ』
項目 | 規定・指針例 | COTECによる補足 | 対象製品のご案内 |
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船体表面粗さ | 船の航行燃費さらには一航海当たりのCO2排出量に大きな影響を与える船体表面の粗さを測定するための装置。スタンダード化されているAHR(Average Hull Roughness)を算出する。 測定データは専用ソフトの他、エクセルでも管理が可能です。 |
船体表面粗さ計 |