JIS K5600-5-4では鉛筆を手で持って試験する「手かき法」は削除され、水準器の付いた専用の器具を用いて試験を行なうのが望ましい方法になりました。
旧JISでは鉛筆に1kgの荷重を加えるようにしましたが、K5600では750gの荷重に変更になりました。鉛筆の角度は45°です。
鉛筆はメーカーやブランドにより例えば同じBでも硬さに違いがあることが知られています。同一ブランドをご使用ください。JISでは三菱Uniが記載されています。
鉛筆の先端は右図のようになります。引っかき硬度試験器には右図のように削るための専用の簡易鉛筆削りが付属しています。
0〜60μmの膜厚では、硬い素地の場合に1mm間隔、柔らかい素地の場合に2mm間隔で切り込んでください。
61〜120μmの膜厚の場合には、硬い素地・柔らかい素地とも2mm間隔で、121〜250μmの膜厚の場合には、硬い素地・柔らかい素地とも3mm間隔で切り込んでください。なお、通常の樹脂塗装は硬い素地になります。柔らかい素地はゴムや軟質の樹脂を示すと考えるのが通例です。
本法は手軽ではありますが、JISで「この試験方法は付着性の測定手段とみなしてはならない。必要な場合には5600-5-7(プルオフ法)を参照する」と記されているように本法はあくまで粘着テープと塗膜の密着との優劣でみる定性的な試験です。
「粘着テープと塗膜との密着 対 塗膜と被塗物との密着」で評価するクロスカット法のみでは不十分になり、プルオフ法との併用が一般化しつつあります。
アナログ式のアドヒージョンテスターが多用されていますが、「はがれや破壊が90秒以内に発生するように1MPa/秒を超えない実質的に一様な速度で張力を加える」の規定に即するように注意しなければなりません。
実際の試験を観察していると、急激に張力を加えた時や、測定器に振動が加わった時などにはく離や破壊が起きやすくなります。一定速度で振動を加えないように試験することが重要です。さらに精度の高い試験にはデジタル式が適します。
JIS Z0313では、「溶剤型塗料を塗装するときには、鋼材表面温度が露点より3℃(ΔT:3℃)以上高いことを確認する」と記載されています。例えば、相対湿度85%では温度が2.5℃下がると結露を起こします。目視では確認できないレベルの結露が塗装トラブルを引き起こしますので注意が必要です。
また、PSPC(IMO塗装性能基準)でもΔTが3℃未満の場合は、ブラスト処理を施すことができないと規定されています。
露点は気象条件等により刻々と変化します。現場塗装ばかりでなく、ライン塗装でも、被塗物のストック場所が冷えていたためブースに持ち込んだ途端に表面に目に見えない結露が生じるケースも意外に多くあります。結露計で確認してください。
汎用的デジタル膜厚計は、測定に当たり校正標準(フォイル等)を用いて測定者自身が校正するという特徴を持ちます。したがって、測定者の校正方法の正しさに測定結果の信頼性は依存します。
また、素地が薄いと測定値は安定しません(臨界厚さが存在します)。最低厚みを下回る場合は、同じ素地を重ねてバックアップなどをしてください。
膜厚値は1回の測定で決めるのではなく、例えばQUALICOATで規定されているように「試験する各部材の有効面から少なくても5ヵ所、各ヵ所3〜5回の計測読み取りを行ないその平均値が測定値として記録される。指定膜厚の80%以下の測定値があってはならない」などと決めるが一般的です。