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PosiTector UTG 超音波厚さ計 (超音波厚み計) 特徴と原理

超音波厚さ計とは?

鋼製の道路橋のサビ・腐食対策が記載された防食便覧には、板厚計測法の項目で測定機器として「超音波厚み計」が掲載されていて、これにより腐食量を管理する方法が具体的に記載されています。膜厚ではなく板厚=素地の厚みを超音波の原理により測定する測定器を文献により「超音波厚さ計」あるいは「超音波厚み計」と異なって呼んでいますが、ここでは「超音波厚さ計」の名称を優先して記載します。

侵食(侵蝕) と 腐食

侵食(侵蝕) / Erosionとは、保護のための膜や基材が物理的に繰り返される摩擦ですり減ることです。侵食の原因としては、キャビテーション、液体や固体粒子の衝突あるいは接触によるものなどが代表的なものです。

腐食 / Corrosionとは、基材に生じる化学的な作用や変化によって、その特性が損なわれたり、摩耗したりすることです。金属の場合、腐食による劣化は、多くの場合酸化プロセスによって引き起こされます。

超音波厚さ計 / Ultrasonic Thickness Gage の適用用途にはどのようなものがあるでしょうか?

超音波厚さ計は、配管、圧力容器、貯蔵タンク、ボイラーなど、腐食や侵食を受けやすい設備・機器の下地の残肉厚を測定するための計測器です。

腐食の影響を受ける産業は数多くありますが、中でも海洋環境は最も過酷な腐食環境の一つです。腐食速度は、海水、湿度、風、温度、空気中の汚染物質、生物など、さまざまな要素に影響されます。また、水や汚染物質の粒子による摩耗、高速液体中の乱流による衝突、気泡による圧力波によるキャビテーションなど、海洋環境での腐食は一般的に存在します。腐食は基材そのものに影響を与えるだけでなく、保護膜を損傷し、基材の腐食の可能性を高めることもあります。船舶、マリーナ、パイプライン、海洋構造物、海水淡水化プラントなどは、さまざまなレベルの海洋侵食や腐食にさらされています。

ポジテクター UTG-C、PosiTector ポジテクターUTG-M、PosiTector ポジテクターUTG-Pのプローブの違いは?

PosiTector UTG-C

UTG-C

ポジテクターUTG-C 超音波厚さ計(腐食) のシングルエコープローブは、デュアルエレメントトランスデューサ、フォーカス「Vパス」、Vパス補正を使用して、激しい鋼素材などの腐食や孔食のある金属の厚さを測定します。 UTG Cシングルエコープローブは、鋼材表面に塗膜がある場合、著しく影響を受けますので、正確な測定精度を得るためには、測定ポイントに存在する塗膜を除去いただくことが必要な場合があります。

PosiTector UTG-M

UTG-M

ポジテクターUTG-M 超音波厚さ計(マルチエコー)のプローブは、単一素子のトランスデューサを使用して、鋼材などの表面に塗膜があってもその影響を無視して金属の厚みを測定します。この厚さ計で測定する金属は、新品または腐食の程度は軽いものに限られます。超音波は、表面に対して垂直の向きで材料の背面壁に直線的に発信されます。3つの連続した背面壁エコーが検出されると、プローブは時間差の計算を行い、読み取り値から塗膜の厚さ分を除きます。

PosiTector UTG-P

UTG-P

ポジテクターUTG P超音波厚さ計(高精度)のプローブは、単一素子の遅延ライントランスデューサを使用して、プラスチックや金属などの薄い材料の厚さを正確に測定します。材料や厚みに応じて、シングルエコーとマルチエコーに自動的に切り替わります。

ポジテクターUTG 超音波厚さ計の原理

超音波厚さ計 PosiTector UTGは、測定する材料に超音波パルスを送信します。このパルスは、材料の中を反対側(背面壁)に向かって伝わります。空気(背面)や他の材料などの界面にぶつかると、パルスはプローブに反射して戻ってきます。パルスが材料中を伝搬するのに必要な時間を超音波厚さ計で測定し、厚みに換算します。

シングルエコー

<図1>

シングルエコー方式のポジテクターUTG-C(およびシングルエコー方式時のポジテクターUTG-MとポジテクターUTG-Pプローブ)プローブには、自動Vパス補正機能を備えたデュアル素子トランスデューサが搭載されています。t1のエコーが戻ってくるまでの時間を計測し、それを2で割って、その材料(鋼材)の音速から厚みが決定されます。

<図2>

鋼材表面に塗膜が存在する場合には、図2のようにエコーが戻ってくるまでの時間が、本体の t1 から t2 のように遅れが発生します。それにより鋼材の厚み値には誤差が生じます。

塗装などのコーティング層は、金属よりも音速が遅くなります。そのため、シングルエコー法では、実際の塗装と金属を合わせた厚みよりも大きな厚みが表示されます。その結果、塗膜の厚さがかなり大きくなり、不明確な値となります。したがって、残念ながら塗膜の厚さを測定し、シングルエコー測定の結果からそれを差し引くという方法では解決できません。

音速はインチ/マイクロ秒(in/μs)またはメートル/秒(m/s)で表されます。音速はすべての材料で異なります。例えば、超音波はプラスチック(~0.086in/µs)よりも鋼材中(~0.233in/µs)の方が速く伝わります。

マルチエコー

<図3>

ポジテクターUTG-M と UTG-Pは、マルチエコーモードにより、少なくとも3つの連続したエコーとエコーの間の時間を測定して厚みを決定します。

マルチエコーモードでは、エコー間の時間だけを測定します。鋼材がコーティングされているかどうかに関係なく、図4のようにすべてのエコー間の時間は同じになります。マルチエコーモードでは、厚さ計はt1t2t3を測定し、それをシングルエコーのように2で割って、さらに3回分である3で割ります。それに材料の音速を元に厚さを決定します。したがって、この測定器による厚みの計算結果は、鋼材の厚みのみを正確に測定したものになり、塗膜の厚みは無視されたものとなります。

<図4>
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