私にとって『個の心』から『公の心への昇華』をどのように進めていったらよいのかを教えてくれる『指南書』となったバイロン・ケイテイ著『ザ・ワーク 副題:人生を変える4つの質問』(ダイヤモンド社刊)をご紹介していますが、今回はその2です。
私たちが悩みストレスを感じるのは、起きていること=『現実』に対してでなく、起きていることへの『考え』の方にあるという根本的な気づきからこの本は出発しています。起きてしまった現実は、たとえどのような考えをもってしても、どのように思い煩おうとも変えることはできません。思いグセによる私たちのストーリーを伴わずに、起きてしまったことをそのまま受け入れられるかどうか、それによって人生は180°変わるようです。ここではエッセンスのみをご紹介します。ぜひ手に取って実際に読まれてみてください。
ークの最初のステップは自分の過去〜未来においてストレスを感じている状況について「裁く」気持ちを書き出すことです。ストレスの原因となっていると思う人についてです。ストレスの原因となっていると思う人について、自分の考えている通りに書きます。
『私は(Aさんに)に対して(怒っている)。なぜなら、…だからだ』
『(Aさんに)、…のように変わってほしい!』
『(Aさんは)…すべきだ(あるいは…すべきでない)』
『私は二度と…たくない』
という形で書きます。
結局は人は誰でも頭の中で常に人を裁いています。そうした裁く気持ちを、非常に不快な内容を伴う考えに対しても、紙の上にそのまま検閲することなく書きます。ときには叫ぶように書きます。
筆者は「99%は許していたとしても、許せない1%の部分こそが、自分が他のすべての人と人間関係において共通して行き詰っているところです」と解説しています。
:夫に対して怒っている。なぜなら私の話を聞いてくれずいちいち反論するから。夫は自身の間違えを認め私に謝ってほしい。夫は妻である私をもっと大切にすべきである。私は二度と「夫から感謝されていない」と感じたくない。
を自分に置き換えます。「私は自分自身に怒っている。なぜなら私は夫の話を聞かないから。」この置き換えた文章は、元の文章と同じくらい真実味を持っているかもしれません。さらに置き換えを進めます。「私は私自身に怒っている。なぜなら私は自分自身の話を聞かないから。」夫がすべきことを考えているとき、私は私の領域を離れ、自分自身に耳を傾けていない状況を作り出しています。置き換えは、健康や平和、幸福のために自分に処方する薬です。人に対して処方しようとしてきた薬を、自分自身に処方することができます。筆者は「自分の問題の原因は『外』にあると感じている限り状況が改善する見込みはありません。あなたは永遠に被害者に留まります。本来は平和にいられるのにかかわらず、苦しんでいるのです」と説明しています。
書では多くの実例が記されていますが、ここでは家族に自分のことを認めてほしいと思っている少年の例についてその概要をご紹介します。実例は理解するうえでとても参考になります。ぜひ、実際に本書を読んでみてください。
「その考えが本当であると、絶対言い切れますか?」の深め方:今までの人生で探求されることなく持ち続けている水面下のビリーフに根差していることが多いものです(ビリーフはストーリーより広い概念で、たちえば「人生には目的があるべきだ」やメディアを通じて刷り込まれた「世界には暴力が多すぎる」などといったものです)。
「最悪の場合何が起こるでしょうか?」もっとも恐れていることを紙の上に限界まで徹底的に表現してみてください。
「証拠はどこにありますか?」確信していても実際には証拠に基づいていないことがよくあります。」
「その考えがなければあなたはどうなりますか?」の深め方:目を閉じで深呼吸をして、「同じ状況でも、その考えがなければ、あなたの人生はどう変わってくるか?」を考えます。
もしかしたら自分のアイデンティティーが失われると感じるかもしれません。過去や未来についての幻想がなくなることに恐れを感じ、「それではこれからどうやって、何をして生きていったらいいのかわからない。何も意味を持たなくなってしまいます。」と言われるかもしれませんが、それに対する筆者の回答はこうです。「過去や未来が無くなったらどうやって生きていったらいいかわからない。―それは本当でしょうか?」
年の例にもあるように、現実への反発はある期間強さを生み出すこともあるかもしれません。それは背後に反発する磁石を置いて前に勢いよく出ていくようなものかもしれません。しかし、「反発力」を持つリーダーのもとで前に進んだ企業はどこかの時点でその推進力を変える必要がありそうです。なぜなら出発点から遠くなるほど磁力は弱くなり、しかも選択できる道筋も無数になっていきます。「反発力」から「引き寄せ力(共感や未来に対する共通したイメージ)」を推進力とする舵取りにどこかの時点で切り替わらなくてはならないようです。その変化を生むためには、まずリーダー自身が変化のひな形にならなくてはいけないようです。ストーリーを伴わずにありのままを受け入れる資質はその変化のために欠くことのできないものであろうと私には思えます。4つの質問の問いかけは、たいへんシンプルな形を取りながら、実はとても深い示唆を持つもののようですね。