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Vol.09-04 連載企画:あわてず、あせらず、あきらめず 2009年4月号

第3回 : 「継続する成功」と「いっときの成功」とを分けている法則 その後編

今回も引き続きジェームズ・C・コリンズ著『ビジョナリカンパニーA 飛躍の法則』(日経BP社)を取り上げます。原題の『GOOD TO GREAT』が示すように、5年わたる膨大なデータと経営者への直接取材からGOOD(そこそこの企業)に属する比較17社とGREAT(それを突破ししかも卓越した状態を15年以上持続している企業)に属する11社とを厳然と分けている法則が存在することを解き明かしています。

厳しい現実を直視する

躍した11社ではすべてきわめて単純な概念が確立していて、それを基準として決定を下していることが分かりました。この概念の確立の時期と突破の時期は一致しています。その概念は、3つの円が重なる点に集中し、そこから逸脱しないという規律です。3つの円は以下の3つを指します。@ナンバーワンになれる部分はどこか。A経済的原動力になるものは何か(11社では鋭い分析によってキャッシュフローと利益を継続的に多く生み出す効率的な方法を見抜いている)。B情熱を持って取り組めるのは何か。

負心で目を曇らせることなく現実を直視し、ナンバーワンになれる部分となれない部分を本当に理解している企業は少ないようです。飛躍した企業では総じて○○当たりの金額を重視しています。例えば「1日あたり利益」とか「1製品当たり利益」などです。この「○○当たり」を社内に問いかけることにより自社の経済的現実への理解を深めていく手法を取っています。さらに、転換期に多くの企業が、○○の部分の焦点を変えています。製品当たり利益から従業員一人当たり利益へ、あるいは部門当たり利益から顧客一人当たり利益へなどへ変換することで意識改革を進めています。

ハリネズミの概念

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社では上記の3つの円が重なる部分に活動の指針をおき、トップはこの領域から逸脱しないことを判断基準としています。これを著者らはハリネズミの概念と名づけましたが、その概念を完成するためには、まず3つの円をすべて完成しなければなりません。巨額の利益を上げてはいてもナンバーワンになれない事業を行なっているのであれば、偉大な企業にはなれません。ハリネズミの概念に合わないものを排除していく必要があります。

※ ハリネズミの概念 : 著者は行動・思考パターンについて2つの類型が示しました。キツネ型とハリネズミ型です。かしこくあの手この手を使ってハリネズミを捕らえようとするキツネ型の行動と体を丸めて全身の針で防御するただひとつの手で毎回キツネの攻撃をかわすハリネズミ型との行動を示しています。

躍する企業は、ビジネス機会が少なくて飢餓になるより、多すぎて消化不良になるリスクを持っています。取捨選択する必要がありますが、大きな機会に遭遇し、なお「ありがたいが見送る」と言うためには規律が必要になります。その基準がハリネズミの概念で、3つの円が重なった部分に入っていないものは飛びつく理由がないということになります。突破に導いたトップは、「やるべきこと」リストと同等に「やめるべきリスト」を活用しています。この点で驚くほどの厳格さを示す特徴が11社のトップ層には共通してあります。

新技術にふりまわされない

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社のトップ層の取材の結果、飛躍をもたらした上位5つの要因の中に誰も『技術』をあげてはいません。しかし、これら11社は実際には高度な技術力を持ち、マスコミもそれを強みの源泉として取り上げています。しかしトップ層の見方は違うようで、取り立てて技術の問題について語っていません。その理由は、ある経営幹部の言葉に集約されます。「当社の成功の20%は採用した新技術によるものだが、80%は企業文化によるものだ。」

技術に対して、取り残される恐怖心を払拭し、技術開発は他社の動きに対応するという観点からではなく、何らかの絶対的な基準に近づこうとして進めているように思われると著者は語っています。ここでもハリネズミの概念による規律が強く守られています。

劇的な転換はゆっくり進む

こそこ良い企業のレベルからの突破点は、外部から見ると一撃により突破口を開いたように見えますが、内部から見ると印象は異なるようです。それは卵の中で成長する雛にも似ています。外部からは「雛が生まれた」という劇的なことでも、雛の側にとっては成長の1プロセスに過ぎないのと似ています。あるトップの次の言葉に代表されます。「これが決定打という瞬間を探し出すことはできない。相互に関連する小さな動きを大量に積み重ねていった結果なのだから。」この点をさらに詳しく考察してみましょう。

躍した企業の多くは、当初は大きな目標を公表していません。むしろ派手な宣伝や動機づけの試みは避けているようにも思えます。まずは大きて重い弾み車を回すように静かに回し始めています。ひとつの段階を成功させてから次の段階へと進んでいます。一段ずつ段階を踏んで、1回転ずつ回していきます。弾み車に勢いがついてから周囲の人たちに次のように話します。「この動きを続けていけば○○が達成できないと考える理由はない。」このような好循環を作り出しています。突破はそれが周囲の目に触れた時期とも言えます。

永続する企業に不可欠なもうひとつの要因

越した状態を継続するためには単なる金儲けを超えた存在理由が決定的に重要になっています。利益とキャッシュフローは健全な身体にとって血と水のようなもので不可欠なものですが、生きていく目的とはなり得ません。これらの会社では基本的な価値観と目的を維持しながら、事業戦略や事業慣行では世界の変化に絶えず適用しています。これは「基本理念を維持し、進歩を促す」魔法の組み合わせです。

者はその二重性を見事に示している例としてディズニーをあげています。1923年に21歳の若者がガレージをスタジオにして短編アニメを製作。34年には長編アニメに挑戦。「白雪姫」や「ピノキオ」を成功させ、50年代にはTVに進出しミッキーが登場。そして、既存の「汚く、まやかしばかりの遊園地」に嫌気がさして自ら世界一の遊園地を作る決心をしディズニーランドが誕生する・・・同社はこのように事業を劇的に変化させてきていますが、基本的価値は一貫して維持しています。それは「ディズニーの魔法」と呼ばれるものです。実はいま業種を問わず多くの企業がこの「ディズニーの魔法」を学ぶためにディズニーインスティチュートに世界から集まっています。ディズニーの魔法と呼ばれる基本理念の中に、業界を超えた「卓越した企業となるための秘密」があるからです。次回はその「ディズニーの魔法」を紐解いてみたいと思います。

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