バキューム吸着の利点
ガラステーブルモデルはクランプ機構により素地・基材(チャートなど)の奥側の1辺をはさんで固定します。固定としては確実ですが、塗料などの塗工材を塗るアプリケーターの走行により素地・基材に対して引き延ばすような力が加わります。素地・基材の材質や性質によっては適さない場合があります。また、対象素地が小さく1辺を挟んで固定することが難しい場合や薄いガラスプレートのようなもろい基材では、クランプにより割れてしまう可能性もあります。
これに対して、バキューム用の多孔板を用いると、素地・基材を塗工面全体で均等に吸着しますので、引き延ばすようなストレスは大きく緩和され、素地が軟らかく波打ったりしやすい場合にも平らな状態に保てる効果を持ちます。
- ◆どちらかというとバキュームプレートはベーカーやバードフィルムアプリケーターなどのブロック型アプリケーターを適用する場合に用いられるケースが多いようです。
押し付ける効果を持つバーコーターと比較して、ベーカーやバードフィルムアプリケーターは素地・基材がフラットであることが絶対条件になりますので、塗工面全体をフラット化する効果を持つバキュームが必要になるケースが多いようです
- ◆バーコーターの場合、素地をわずかにくぼませるようにして塗工するのが理想的であるとも言われます。
バーコーターを用いるときにチャートの下にラバーマットを敷くと塗工の失敗が減ったという例が多くあります。
※ラバーマットを使用する場合はバキュームは使用できません。
2種類あるバキュームテーブル(バキュームプレート)
バキュームプレートには2種類ありますが、多孔板が一般的です。多孔版では不都合が生じる場合にのみダブルチャンネルをご検討いただくことになります。
(1)多孔板
等間隔で細い孔があいています。この孔を通じて素地(チャートなど)を吸引し固定します。
吸引範囲はA4範囲とA3範囲の2段階になっています。チャート(素地)サイズをA4かA3に選択すると自動的に吸引範囲が変更されます。
A4サイズより小さいものを固定する際には、余分な孔を養生テープなどでマスキングしてふさぐ必要があります。
バキュームプレートの下にすぐにバキュームポンプやバキューム用のメイン孔があるわけではありません。万一バキュームプレートの孔から塗料やインクが落ちても、直ちにポンプに吸われることがないように、メイン孔は塗工範囲の下にはありません。装置の一番奥側、クランプ機能がある下に位置しています。
A4エリアとA3エリアを区分けするためのリング状のパッキンが設置されています。
(2)まれに凹みが生じるケースがあります
真空度は最大で-178mbarですので、必要以上に強力に吸着するわけではありません。しかし、素地がごく薄く例えばシリコンフィルムのようにたいへん軟らかい場合に、吸引孔により凹みが生じる場合があります。
このような場合にダブルチャンネルによる吸引が検討されます。
(3)ダブルチャンネルバキューム
A3サイズの外側にある2列の溝によって吸引します。したがってA3用チャートあるいは素地であれば外周部のみで固定され、2列の溝部分の内側を有効塗工エリアとして使用します。
2列の溝(ダブルチャンネル)のサイズは変更できません。
以上のように適用範囲や使用条件が限定されますのでご注意ください。
迷われたら…
(1)ケース1 バキュームプレートにするか、ダブルチャンネルにするか…迷われたら
あまりご心配は要らないかもしれません。
バキューム専用タイプを購入された場合、バキュームプレート(多孔板)→ダブルチャンネルプレートあるいはバブルチャンネルプレート→バキュームプレートへの変更は簡単です。ご自身でプレートを載せ替えるだけです。
- ①多孔版テーブル付でバキューム専用モデルKT-AB3225を購入された場合
ダブルチャンネルをご利用されたい場合にはオプションでダブルチャンネルプレート:
KT-AB3300を追加ご購入ください。 - ②ダブルチャンネルテーブル付でバキューム専用モデルKT-AB3225を購入された場合
通常のバキューム(多孔)板をご利用されたい場合にはオプションで多孔板プレート:
KT-AB3200を追加ご購入ください。 - ③マルチベースユニットKT-AB3425をご使用の場合
どのプレートも適用可能ですので、必要なプレートを追加ご購入ください。
(2)ケース2 バキュームモデルにするか、ガラスプレートモデルにするか迷われたら
マルチベースユニットをご採用されることをお勧めします。
バキューム専用モデルでガラスプレートを使用することはできません。バキューム専用モデルにはクランプ機能がないため固定ができません。
また、ガラスベット専用モデルでバキュームを使用することはできません。
マルチベースユニットであればすべてのプレートが適用できます。
マルチベースユニットKT-AB3425に使用できるプレート
- ①多孔板バキュームプレート KT-AB3200
- ②ダブルチャンネルプレート KT-AB3300
- ③ガラスプレート KT-AB3100
(3)ケース3 バキュームで固定するか、クランプで固定するか迷われたら
マルチベースユニットをご採用されることをお勧めします。
バキューム専用モデルにはクランプ機構がありません。マルチベースユニットであれば、バキューム使用時でもクランプ機構を併用することができます。
底面が凸凹した素材の場合、基材そのものがポーラスな多孔質の場合、基材に反りがある場合などはバキュームによる吸着ができない場合があります。
ヒートバキュームモデルを採用される場合の主な注意点
ヒートバキュームモデルには以下の機能がありませんのでご注意ください。
- ①バキュームエリアの切替機能…すべてのケースでA3サイズで吸引されます。A3サイズより小さい基材を使用される場合には周囲の孔を養生テープなどでふさいでください。
- ②クランプ機能
マルチベースユニットのように、バキュームとクランプを併用して使えるモデルはありません。 - ③ダブルチャンネルプレートへの交換
多孔板は本体と一体化されていて固定されています。お客様がはずすことはできません。 - ④プレートの取外し
多孔板は本体と一体化されていて固定されています。お客様がはずすことはできません。