アプリケーターと粘度との関係
各アプリカーターの塗料やインクなどのコーティング材の粘度に対する一般的特性・傾向についてご説明いたします。
アプリケーターがコーティング材の厚みを規制しながら塗っていく接液部の形状は、主に図1の3種類になります。すなわちステンレス製のワイヤが固く芯に巻かれているスパイラルバーコーター、接液部が丸いベーカーフィルムアプリケーター、接液部が鋭角になっているバードフィルムアプリケーターです。
図1:各アプリケーターの写真
右図に模式図を示したスパイラルバーコーターは、コーティング材とのなじみ(親和性)が良いため、塗りやすく汎用的に用いることができます。
アプリケーター全般に言えることですが、粘度が高い液ほど、アプリケーターをゆっくり時間をかけて移動させる必要があります。
しかし、それでもスパイラルバーコーターの場合は、レベリングしきれずに巻線の跡が残ったり、コーティング材がバーコーターを乗り越えてしまうといったトラブルが生じやすくなります。
図2:バーコーターの模式図
このため、蜂蜜や糊、あるいはピーナツバターのようにかなり粘度の高いものに使う場合には、一般にはスパイラルバーコーターよりもバードあるいはベーカーフィルムアプリケーターの方が適しています。
特にバードフィルムアプリケーターは、高い『粘着性』を示すコーティング材に向いている(この場合、粘性と似た性質ではありますが、「粘着性」と表現した方がより適切であると思います)と言われています。
説明のために図3~4のイラストを用います。
粘着性の高いコーティング材をベーカーフィルムとバードフィルムに適用した際のコーティング材の流れの挙動を通常のコーティング材の場合と比較して考えてみましょう。
図3は通常のコーティング材を用いた場合です。ベーカーもバードフィルムアプリケーターもコーティング材は同じような流れの挙動を示しています。
図3:通常のコーティング材を使用した場合
しかしながら、図4のように粘着性のあるコーティング材では挙動が異なってきます。
説明のために極端な描き方をしていますが、粘着性の影響でコーティング材はアプリケーターの接液部の下流側でアプリケーターにくっついて盛り上がるような流れ方をします。ベーカーフィルムアプリケーターの方がこの傾向が強く出ます。この場合、膜厚の再現性や塗ったコーティング材と素地(チャート紙など)との付着性に支障が生じる可能性があります。
図4:ベーカーにより粘着性の高いコーティング材を使用した場合
一般に失敗が少なく塗りやすい順番では、スパイラルバーコーター > ベーカーもしくはバードの順に優れます。
そして、一般に膜厚の精度の高さでは、ベーカーもしくはバード > スパイラルバーコーターの順です。
さらに、粘度・粘着性の高いコーティング材を塗る場合の適応性では、バード > ベーカー > スパイラルバーコーターの順となります。
以上のようにアプリケーターの種類をご選択いただく際の目安として、一般的な傾向をご紹介いたしました。
例えば、塗膜の隠ぺい力を評価するためのJIS K5600-4-1隠ぺい力の序文には次のように記されています。
「同じフィルムアプリケーターを用いても操作者が異なる場合には著しく異なった膜厚の塗膜が得られるので絶対的な方法が要求される。」
実際にはアプリケーターで塗った時のコーティング材の挙動はアプリケーターの移動速度などにより大きく異なってしまいます。バーコーターやベーカーフィルムアプリケーターなどの仕様や精度をいくら気にしても、手で操作する以上は「バラツキ」は避けられないようです。
なお、これまでは任意に設定した速度で正確にアプリケーターを移動させるための自動フィルムアプリケーターはたいへん高価なもので、採用に躊躇されることも多かったようです。これまでは、均一性を確保するためにさまざまな工夫が試されたり、数多く塗った中から膜厚が同じものを選ぶなどの苦労がありました。しかし、最近では比較的安価で高性能な自動アプリケーター(自動塗工機)が開発され状況は一変しています。