対象規格
JIS K5600-5-7(ISO4624)
試験の目的
試験板に対して垂直の方向に対するはがれまたは破れに必要な最小限の張力の測定によって、単一塗膜または多層塗膜の付着力を評価するものです。
適用範囲
この方法は広範囲の素地に対して適用が可能です。特殊な目的に対しては直接試験円筒に塗装することも可能です。
準備するもの
(1) 引張試験機
①塗装した素地面に対して垂直に力を加えられるもの。②はがれあるいは破壊が90秒以内に発生するように1MPa/秒を超えない実質的に一様な速度で張力を加えられるもの。※1MPa/秒=1MN/m2・s
※手動で張力を加えるものについては、一定速度で張力を加えられるように注意しながらハンドル等を回転させてください。急激に張力を変化させたり、試験機が振動・ぶれたりすると、本来の張力値に達する前にはく離などが起きてしまいますのでご注意ください。
(2) 試験円筒(ドリー)
他で協定していないかぎり、直径20mm。試験により変形しないもの。試験円筒の長さは直径の半分以上であることを推奨しています。
●試験の目的や条件等により、20mm以外の直径(10mmや30mmなど)のご要望もありますので、当社では特殊仕様品の製作も行っております。
(3) 切り込み具
試験円筒の周囲を丸く、接着面・塗膜を貫通して素地まで切り込むためのナイフのようなもの。
(4) 接着剤
①塗膜のはく離あるいは破壊よりも接着剤の接着力あるいは凝集が勝っていること、②塗膜に可視的な変化を起こさない、接着剤選択の条件となります。
●JISでは、「大部分の場合、シアノアクリレート、二液エポキサイド、パーオキサイド触媒型ポリエステル接着剤が適していると言われている」と記述していますが、明確に「このケースではこの接着剤」といった指定はありません。したがって、試験者側で接着剤の選択を行う必要があります。
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接着方法
手順
- ①試験円筒の接着面を清浄にして、一様に接着剤を塗布してください。接着剤は必要最小限の量とし、できれば余分な接着剤はただちに除去してください。接着する塗膜面を軽くこすることで接着性は改善されます。
- ②十分に接着剤が硬化したら、注意深く試験円筒周囲の接着面及び塗膜を貫通して素地に達する切り込みを行います。
- ③はがれあるいは破壊が90秒以内に発生するように1MPa/秒を超えない実質的に一様な速度で張力を加えます。
※張力の軸方向のアライメント(正確に垂直方向に引っ張る)が確保されない限り再現性は得られません。 - ④破壊強さをMPaで表示するとともに、付着破壊、凝集破壊、あるいは両方が同時に起きたのか、どこの塗膜あるいは塗膜間で起きたのかを記録してください。
※少なくても3回の測定を実施します。
<補足>
付着破壊:①塗膜と素地の間でのはく離、②多層膜では層間でのはく離が付着破壊としては生じます。試験後のドリーの接着面を見ると、①ではドリー側に塗膜が残り、試験サンプル側には素地が見えることになります。②ではドリー側に塗膜が残り、試験サンプル側にはそれとは異なる塗膜が残ることになります。
凝集破壊:塗膜自体の強度が接着・付着強度より劣っている場合に生じます。塗膜そのものが引きちぎられた状態になります。試験後のドリーの接着面にも試験サンプル側にも同じ塗膜が残る本既定での付着力値とは、以上の2つのどちらかもしくは両者が複合的に生じた際の引っ張り力を言います。したがっていずれも試験としては有効となります。測定条件と張力値とともに、破壊面をよく観察して、どこで・どの破壊が生じたのかを記録してください。
ドリー接着面でのはく離:試験後のドリー接着面を見ると、何も残っていないかあるいは接着剤そのものが残っています。残念ながら付着力値は得られませんでした。