対象規格
JIS K5600-5-6(ISO 2409)の規定にない250μm超の膜厚の場合についての考察
項目名(課題)
JIS K5600-5-6(ISO2409)では250μmを超える場合にはこの規格は適用できまないとされており、その場合は「単一カットの方法により試験を行なうことができる」と記されています。しかし、JIS K5600-5-6にはこの具体的な方法に関する記述はなく、あいまいなままとなっています。250μmを超える塗膜の付着性を具体的にどのように検査したらよいのかを考えてみたいと思います。
ただし、明確な規定がないままですので、対応策の案としてご提案をさせていただきます。
選択肢1:JIS K5400-8.5.3に記載されたXカットテープ法を準用する
JIS K5600-5-6に記載された単一カット法は、一般にJIS K5400-1990に記載された8.5.3.に記載された「Xカットテープ法」を想定していると言われています。その試験の概要は以下の通りです。
ただし、JIS K5400は現在では廃版となっている規格ですし、25マスのクロスカット法とは特性が異なるように思われます。規格にも「試料の製品規格に規定する評価点数と比較する」と記載されているように、すでに塗料メーカーや発注者より製品規格としての指示がされている必要があります。過去の適用実績がない場合にどの評価点数をもって良否とするか判断することは難しいと思われます。
(1) カット方法とテープの貼り方
カッターナイフを用いて互いに30度の角度で交わり素地に達する約40mmの切込みを入れます。
次に交差する2本の切込みの上から接着部分の長さが約50mmになるようにセロハン粘着テープを貼り付け、消しゴムで上からこすって、塗膜にテープを完全に密着させます。
テープを付着させてから、1~2分後にテープの端を持って塗膜に直角に瞬間的に引きはがします。
(2) 評価方法
Xカット部のはがれの状態を目視によって観察し、下図により評価点数を求めます。
選択肢2:JIS K5400-8.5.2に記載された碁盤目試験(クロスカット)法に規定された5mm間隔を準用する
ただし、JIS K5400は現在では廃版となっている規格ですが、クロスカットにより付着性を評価しますので、JIS K5600-5-6と同じ特性により評価することになります。また、この方法は建築塗装などにおいてこれまでも広く用いられてきていますので、比較的に受け入れられやすい対応策となっています。
図:カッターガイドの例(1mmすきま用を例示)
規定されているすきま間隔は3種類で、1mm、2mmと5mmです。
膜厚によるすきま間隔の使い分けの規定はありませんが、5mm間隔は特に厚膜用に規定されたものです。
5mm間隔の場合、直行する4本ずつの切込みを行ない、9マスで評価を行ないます。
- ◆JIS K5400に準拠した5mm間隔のカッターガイドの製品情報は以下のページでご覧ください。
http://www.cotec.co.jp/coating-equipment/cotec/e/ce01.html
選択肢3:JIS K5600-5-7(ISO4624)「プルオフ」法を適用する
選択肢1と2のいずれもが、現在適用されている規格であるJIS K5600の付着性の項目には記載されていません。したがって、厳密にはJIS K5600に基づいて試験を行なったとは言えません。
JIS K5600において、付着性を試験する方法で、膜厚の限界規定がないものは、プルオフ法となります。クロスカット法のような手軽さはないですが、現行のJIS規格であるJIS K5600において対応するためには、この方法しかないように思われます。
- ◆JIS K5600に適合したプルオフ試験用アドヒージョンテスターの製品情報は以下のページでご覧ください。
http://www.cotec.co.jp/coating-equipment/defelsko/e/de01.html