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Vol.12-02 連載企画:あわてず、あせらず、あきらめず

なぜ学ぶことが必要なのか その2

深く掘り進むとやがてその底に水脈が現れる。その水脈をたどると別の離れたところで掘られた穴と深いところでつながっている・・・経済でもスポーツでも、あるいは人文や自然科学の分野でも、優れた洞察力と探究心をもって深く掘る人の知見は、分野を問わず私たちの「灯台の光」となります。今回も前回に引き続き「動的平衡」(福岡伸一著、木楽舎刊)を取り上げます。同書は「ヒト」そして「人」を自然科学の視点から掘り下げた本ですが、そこには紛れもなく水脈が見えます。ですから、主語を「会社」や「仕事」に置き換えることさえ可能であるようです。今回は試みに主語を置き換えながら読み深めてみたいと思います。たいへん魅力的な本ですのでぜひ手に取って読んでみてください。

消化の本当の意味は?

化とは、腹ごなれがいいように食物を小さく砕くことがその機能の本質では決してなく、情報を解体することに本当の意味がある。タンパク質は、消化酵素によって、その構成単位つまりアミノ酸にまで分解されてから吸収される。…消化管の内部は、一般的には「体内」と言われているが、生物学的には体内ではない。つまり体外である。…消化管は、私たちの皮膚が内側に入り込んだ中空の構造体(ちょうどボールの皮が内側に陥没してやがて反対側に達したようなもの)であり、それはチクワの穴のようなものなのである、消化管壁は一種のバリアーであり、まるごとのタンパク質がそのまま通過することを許さない。つまり他者の情報を保持したタンパク質は身体の「外側」に留め置かれる。そこでタンパク質はアミノ酸まで分解され、アミノ酸だけが特別な輸送機構によって消化管壁を通過して、初めて「体内」に入る。体内に入ったアミノ酸は血流にのって全身の細胞に運ばれる。そして細胞内に取り込まれて新たなタンパク質に再合成され、新たな情報=意味をつむぎだす。…新たなタンパク質の合成がある一方で、細胞は自分自身のタンパク質を常に分解して捨て去っている。…合成と分解との平衡状態を保つことによってのみ、生命は環境に適応するよう自分の状態を調整することができる。

会社もさまざまな情報を吸収して、自分を作り変えながら生きています。情報という外からの刺激なしに自社のさまざま部位を再生し続けることはほとんど不可能でしょう。しかし、ここに重要な2つの点があるようです。@内側は空間的に外側に開かれたものである(外の風が会社の中にどんどん入るようにする)こと。Aしかし、その情報はそのまま取り入れるのではなく、必ず本質という単位まで分解してから吸収しなければならないということ。他者のためにまとめられた情報をそのまま取り入れても、自社の血肉とはならないようですね。

なお、本書では情報を鵜呑みにすることの空しい恒例も紹介しています。例えば…
食品として摂取されたコラーゲンは消化管内で消化酵素の働きにより、ばらばらのアミノ酸に消化されて分解される。コラーゲンはあまり効率よく消化されないタンパク質である。消化されなかった部分は排泄されてしまう。…コラーゲン由来のアミノ酸は、必ずしも体内のコラーゲンの原料とはならない。むしろほとんどコラーゲンにはならないと言ってよい。

自然界はS字を横に伸ばしたカーブが好き?

は比例関係以外の関係を理解するのが苦手なのである。ところが…自然界のインプットとアウトプットの関係は多くの場合、Sの字を左右に引き伸ばしたような、シグモント・カーブと言う非線形性を取るのである。…(たとえば音量のボリュームつまみに喩えると)ボリューム・ダイヤルをだんだん右にひねっていくと、ボリュームは大きくなっているはずなのに、音はなかなか大きく聞こえてこない。つまり最初の段階では、インプットに対する応答性は鈍い。ところが、ある位置を超えると、音は急にガーンと大きくなって聞こえる。ここで応答性は鋭く立ち上がるのである。…(しかしある位置からは)ダイヤルの回転に応じて大きくは聞こえない。つまり、シグモント・カーブおいて、インプットとアウトプットの関係は、鈍−敏−鈍という変化をするのである。

多くの努力が実を結ばないのは、最初の「鈍」部分でやめてしまっているからなのかもしれません。京セラ創業者の稲盛和夫さんは、「事業で失敗したことはない。なぜなら成功するまでやり続けるから」と答えています。僕などは「言ってもわかってくれない」「やる気があるんだか無いんだか…」とすぐに不満を言ってしまいます。しかし、それはまだ「鈍」のゾーンにあるからなのかもしれませんね。あきらめかかってからの「あと少し」「もう1歩」が大切なようです。

しかし、その一方で、「やりすぎ」によって失敗を招いている例も多いようです。成功パターンにしがみ続けると、いつの間にか再び「鈍」のゾーンに入ってしまっていたり…。

部分最適を足すと全体最適になる?

食の時代に生きる現代人は、常時オーバーカロリーの危険性にさらされることはあっても栄養素が欠乏することはほとんどあり得ない。それは糖質、タンパク質、脂質の3大栄養素はもちろん、身体が作り出すことができないビタミンとミネラルでもそうである。少なくとも普通の食生活をしている日本人であれば、不足する栄養素は一つとしてない。…私たちが、どこか身体の調子が悪い、なぜか疲れが取れない、お肌の調子がおかしい、そんなふうに感じた時に「きっと何らかの栄養素が不足しているからだ」と思うのは幻覚なのである。サプリメントを欠かさず飲んで、不足しがちな栄養素を補おうという行為は、栄養障害でもなんでもなく、むしろ脅迫的な神経症状に近いと言える。…ほとんどの栄養素は程度の差こそあれ貯蔵できる。たとえ多い日、少ない日があっとしても平均してだいたい所要量に見合った摂取が行われている限り、収支は維持されうる。…(しかし)…タンパク質は貯蔵できない。成人1日当たりの所要量は60グラム(乾燥重量)だ。…朝は抜いて昼もコーヒー程度でごまかし、夜になってからドカ食いするような生活を続けているとすれば、この人は、飽食の時代にあって、1日のうち約3分の2は飢餓状態に陥っていることになる。

私たちは、問題が生じるとすぐに対処療法を取りがちです。そして、問題が解決したような気になります。しかし、実際にはたまたまそこに現象として出ただけで、違うところに原因の根があることが多いようです。部分最適をいくら足し算しても、全体最適にはならないばかりか、深刻な揺り戻しに合いそうです。

部分最適の思想が企業のエゴにより先鋭化された時にどんなことになるのか?遺伝子組み換えの問題を通じて本書はぞっとするような実例も挙げています。

アメリカにモンサント社と言うバイオテクノロジー企業がある。遺伝子組み換え技術を使ってさまざまな「商品」を生産しているのだが、「ラウンドアップ」という強力な除草剤も開発していた。これを撒くとペンペン草も生えない。もちろん農作物自体にも作用して枯らしてしまう。そこでモンサント社は「ラウンドアップ」に耐性を持つ遺伝子を大豆に組み込んだ。こうすれば、その大豆を畑に撒いて、ヘリコプターから「ラウンドアップ」を振りまいておけば農作業はまったくの手間いらず。…おまけに念入りにも遺伝子組み換え大豆に1年しか使えないような細工をした。

どこまでエントロピーの増大に先回りできるか?

たちが棲むこの宇宙において、輝けるものはいつか錆び、水はやがて乾き、熱あるものは徐々に冷えていく。時間の経過の中で、この流れに抗することはできない。…これが「エントロピーの増大の法則」である。…秩序あるものはすべて乱雑さが増大する方向に不可避的に進み、その秩序はやがて失われていく。…生命はそのことを予め織り込み、1つの準備をした。エントロピーの増大の法則に先回りして、自らを壊し、そして再構築するという自転車操業的なあり方、それがつまり「動的平衡」である。…生命は、こうして不可避的に身体の内部に蓄積される乱雑さを外部に捨てている。この精妙な仕組みこそが、生命の歴史が38億年かけて組み上げた、時間との共存方法なのである。。

会社が常に変革をし続けていなければならないのは、会社の成長のためという以前の、そうしないと生き残ることすらできないという自然の法則があるからなのですね。

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