高粘度の塗工液とアプリケーターの相性

JISが警告する『同じフィルムアプリケーターを用いても操作者が異なる場合には著しく異なった膜厚の塗膜が得られるので絶対的な方法が要求される』はなぜ?

JISには上記のように注意を喚起しています。例えば同じスパイラルバーコーターを用いたとしても引く速度により大きな差が生じるのでしょうか?高粘度の試料を用いて実際に検証してみました。

使用したアプリケーター スパイラルバーコーター ウェット膜厚50μm用 ロッド直径10mm
使用したチャート レネータ チェッカーチャート シールド(非浸透)タイプ
使用した自動コーター TQC AFA ガラステーブルモデル
使用した塗工液の粘度 高粘度
移動速度 5mm/秒 50mm/秒 100mm/秒
乾燥後膜厚 28.6μm 19.0μm 30.1μm
斜めから光を当てて乾燥後の塗膜表面の状態を観察したものが上の画像です。細かなスジ状の模様がはっきりと確認できます。
高粘度になるととたんにバーコーターの塗工は不安定になります。速度により膜厚が大きく変わるだけではなく変化も不規則です。移動速度を均一化したとしても塗工は難しそうです。粘度に関してのバーコーターの適性は低~中粘度と言えそうです。

バーコーターより再現性が高いと言われるベーカーフィルムアプリケーターで移動速度の影響を見てみましょう

使用したアプリケーター ベーカーフィルムアプリケーター ギャップ50μm
使用したチャート レネータ チェッカーチャート シールド(非浸透)タイプ
使用した自動コーター TQC AFA ガラステーブルモデル
使用した塗工液の粘度 高粘度
移動速度 5mm/秒 50mm/秒 100mm/秒
乾燥後膜厚 14.5μm 22.7μm 28.1μm
斜めから光を当てて乾燥後の塗膜表面の状態を観察したものが上の画像です。比較的大きなうねりのような模様が確認できます。
移動速度に関係なく発生していますが、速度が速いほどうねりははっきりするようです。
ベーカーフィルムアプリケーターをご利用いただく際には、移動速度が速くなり過ぎないことが重要です。

高粘度の試料に適すると言われるバードフィルムアプリケーターで同様の実験をしてみましょう

使用したアプリケーター バードフィルムアプリケーター ギャップ50μm
使用したチャート レネータ チェッカーチャート シールド(非浸透)タイプ
使用した自動コーター TQC AFA ガラステーブルモデル
使用した塗工液の粘度 高粘度
移動速度 5mm/秒 50mm/秒 100mm/秒
乾燥後膜厚 13.8μm 16.8μm 11.7μm
スジ状の模様は見受けられません。ギャップに対して膜厚は3分の1以下になりますので、ギャップと膜厚の関係そして移動速度の管理が重要です。
バードフィルムアプリケーターは個性がはっきりしていて、高粘度専用のアプリケーターと考えても良さそうです。

補足:使用した塗工液の粘度

使用した塗料の粘度は以下の通りです。
  • 23,000mPa.s の接着剤です(はちみつは一般に10,000mPa.s 程度と言われています)。