ブレスルキットの使い方

対象規格

JIS Z0313, ISO 8502-6, ISO8502-9

ブレスルキットによる測定について

ISO8502-6、ISO8502-9、 JIS Z0313-5に準拠する TQC-BRESLE CHLORIDE TEST を例に試験器の取扱方法についてご説明いたします。実際の試験に当たりましては、試験器の取扱説明書およびISO、JIS、PSPCなどの関連資料・対応規格をご参照ください。

この測定方法は、JISでは Z0313の5.1.3.電気伝導率測定による表面付着塩類の評価法に該当します。IMO塗装性能基準:PSPCでも1次表面処理の検査項目「NaClに相当する塩分濃度」の測定について、「ISO 8502-9 (1988. Preparation of steel substrate before application of paints and related products - Test for the assessment of surface cleanliness)に従った電気伝導率測定」で行うように指示されているように最も多用されている方法です。

ブレスルキットの構成

電気伝導度計

電気伝導度計…1台

商品コード:KT-HI0017
調査の結果、測定誤差を生む最大の要因はゼロ基準を取る際に「接液部を手で触ったこと」でした。手で触れることなしに測定ができます。
校正液&クリーニング液

左:校正液(60ml)…1個

商品コード:KT-SP7320
ラベル表示:Calibration solution

右:クリーニング液(60ml)…1個

商品コード:KT-SP7321
ラベル表示:Cleansing solution
ブレスルパッチ

ブレスルパッチ…25枚

商品コード:KT-LD6504
調査の結果、測定を失敗する最大の原因は、パッチからの水漏れでした。ブラストの凹凸面にも確実に付着します。
ラベル表示:Bresle Patches
注射器&交換注射針

注射器(2.5ml用)…1つ

商品コード:KT-SP7930

注射器(20ml用)針無し…1つ

商品コード:KT-SP7370

20ml注射器用 注射針…1つ

商品コード:KT-SP7931
イオン水&ビーカーチ

非イオン水(200ml)…1つ

商品コード:KT-SP7330
サンプリング用の専用液です。
ラベル表示: Deionised Water

使い捨てビーカー(25ml用)…6個

商品コード:KT-SP7999
マグネットスポットマーカー

マグネットスポットマーカー…1枚

商品コード:KT-SP7933
マグネットなのでブラスト面に磁力で付けることができます。測定値の指示あるいは写真撮影時の記録用などにお使いください。
サイズは35×35mmです。

はじめに…試験を行う前のお願い

この装置を使うと、かなり低い濃度の汚染物でも検知されます。したがって、最も大切なことはこの検査に使用される全ての材料をできるだけ清浄に保つことです。使用済みの注射器内や注射器の針などは蒸留水等で洗ってください。

注意!測定する液(水)が接する部分は決して手で触らないでください

  • 電気伝導率計の測定部(センサー部)
  • ビーカーの内側
  • 注射器の針
  • 検査する素地(ブラスト)面
  • 校正液、クレンジング液、非イオン水などの使用液
ご注意

電気伝導率計のセンサー部は必ずクレンジング液で洗ってください。
その他の器具の測定液が触れる部分は水道水ではなく必ずクレンジング液か蒸留水をご使用ください。
※ 蒸留水(精製水)は電気伝導率が10μS以下のものを使用してください。

測定手順

手順1:

ブレスルパッチを用意しパッチを貼る場所を選定します。
総表面付着塩分濃度を評価するための測定箇所としてふさわしい鋼材表面を選んでください。その場所は、ブレスルサンプラー (ブレスルパッチ)の周囲接着面が表面に適切に付けられるように、できれば乾燥していて、はく離しやすいさび、汚れ、湿気のない箇所を選んでください。ブレスルパッチは、垂直面でも、水平面でも、傾斜面でも、あるいは完全に平らというわけではない面にでも、付けることが可能です。ブレスルパッチの接着面のTQCのロゴが印刷された保護紙(図中①)を剥がし、内側の発泡材 (図中②)を取り除き、さらに③の保護フィルムを取ります。

手順2:

ブレスルパッチをブラスト面などの試験対象面に貼ります。

  1. ①ブレスルパッチの角をまず貼り付けます。
  2. ②接着面の空気を押し出すようにして検査面に貼り付けます。
  3. ③パッチ内の空気を押し出しながら、パッチを試験対象面に十分に密着させてください。
→
ご使用になられる前に…
「電気伝導率計-Tester11+」の取扱説明書をよくお読みになり、定期的に校正液による校正を実施してください。

手順3:

電気伝導率計を準備します。

左図:
「テスター11プラス(Tester11+)」の測定セル部
 

ご注意

電気伝導率計のセンサー部の洗浄には必ずクレンジング液を使用してください

手順4~5:

右の写真の非イオン水の電導度を測定します。Deionised Water と記載された非イオン水のボトルから注射器で2.5ミリリットル吸い上げます。

※ その際に注射器の針は予め蒸留水等で清浄されたものをご使用ください。

手順6:

その内の1.5ミリリットルを電気伝導度計の測定セル部に注ぎます。


電気伝導度計の電源を入れます(校正されていることを確認してください)。温度を自動補正するので少しの間待ちます。表示がいったん安定したら、ホールド(hold)ボタンを押して、測定値を読み取ります。
この値が水の電導度のゼロ基準値です。この数値を直ちに記入してください。右図の専用の記録紙をお使いの場合には、「Blank Value(初期値)」の欄にご記入ください。

手順7:

電気伝導計の測定セル部に入れた水を再び注射器で吸い取ります。

手順8:

注射内の2.5ミリリットルの非イオン水を試験面に貼り付けたブレスルパッチ内に全量注ぎます。
針は下の写真のように発泡材枠を貫通するようにしてください。
ゴム膜や枠の底部に穴をあけると、中の液が漏れ出す原因になります。


手順9:

90秒以上の間、パッチ内に入れた水を、ゴム膜の上から軽くたたくようにして中の水を撹拌してください。

→

手順10:

ピストンを往復させてください。慎重に注射器のピストン部を押したり引いたりして蒸留水が注入器とパッチ内部を往復させ、検査表面の塩分が非イオン水に溶け込むようにします。この操作を少なくても2回以上行ってください。

手順11:

パッチ内の液を全量注射器に回収します。
終了したら、水を全量注入器に吸い上げ、ブレスルパッチから注入器をはずします。

→

手順12:

液の電気伝導率を測定します。
電気伝導度計の測定セル部にその注射器で吸い上げた液の中から1.5ミリリットルを注ぎ込みます。
注射器には余った1ミリリットルの液が残ります。
測定セル内の塩分が溶けた水の電導度を測定し、それを直ちに記録してください。

μS: マイクロ・シーメンス
S: siemensシーメンス(濁ってジーメンスとも読む)は導電率(コンダクタンス)を表す単位でSI単位(国際単位系)です。

手順13:

付着塩類濃度を計算します。
手順12で計測した測定値 (Measured Value) から手順6で求めた初期値 (Blank Value) を差し引き、それに係数1を掛けます。
以上のことをまとめると、mg/m²当りの全表面における水可溶性化合物の濃度:Sは次の式になります。

S = 1×(Measured Value/計測値μS - Blank Value/初期値μS)

ISO/JISにしたがって、この計算結果を塩化ナトリウムの表面濃度として記載します。

< JIS Z0313の該当部分の抜粋です >
ブラスト処理表面に付着した塩化物や硫酸化合物などの水可溶性化合物の全体量を、それらを溶解させた水溶液の電気伝導率として評価する方法であり・・・(中略)・・・塩化物、硫酸化合物など個々の化合物の量を直接測定することはできないが、水可溶性化合物のすべてが塩化ナトリウムであると仮定し、測定結果を塩化ナトリウムの表面濃度に換算し表現する。

例: もしも、仕様書に10μg/cm²未満であること
…と規定されていたら1000μg(ミクロングラム)=1mg(ミリグラム)です。したがって、10μgは0.01mgです。0.01mg/cm²となります。
これをm²当たりに換算したいと思います。
m²=10,000cm² したがって、0.01mgの10,000倍となり、100mg/m²となります。

< ご注意ください >

  • Chloride(塩化物)またはClだけの表示が必要な場合には、倍数を1の代わりに0.6を使います。
  • 測定に使用した水をすべて容器に空け、重要な部位は蒸留水等でゆすいできれいにしてください。
    測定に使用するものが清浄であることは、測定結果の信頼において最も重要なことです。
  • 検査終了後、ブレスルパッチを必ず検査表面から取り外してください。

研削材(ブラスト材)に付着した塩分検査の手順

本試験は、素地調整の現場で有用な方法として用いられておりますが、ISOに規定があるものではありません。
(財)日本船舶技術研究協会は、「1次処理においては、ブラスト後でブラスト前より塩分が増えていることが確認される。これはショッププライマーの塗装ラインにおいては研削材が自動的に回収され繰り返し使用されていることにより研削材に付着してきた塩分が、ブラスト処理によって鋼材表面に付着したものと思われる。」という研究報告をされています。ブラスト処理面もさることながら、研削材を良好な状態に保つこともたいへん重要ですので、回収利用される場合には研削材のチェックをされることをお勧めいたします。

本検査を行うためには以下のオプション(ビーカー)または同等のものが必要になります。

  • 50mlビーカー
    KT-SP4550
  • 250mlビーカー
    KT-SP4551
  1. 1:異なる場所からランダムに研削材(ブラスト材)のサンプルを最低5つ以上集めます。
  2. 2:上記のものをよく混ぜ、その中から50ミリリットル分を取り出し、50ミリリットル用ビーカーに入れます。
  3. 3:100ミリリットルの非イオン水をあらかじめ蒸留水等※で洗浄した大きい方の250ミリリットルビーカーに注ぎます。
  4. 4:電気伝導率計でその水の数値を読み、その数値をメモします。これがBlank Value(初期値)です。
  5. 5:50ミリリットルの研削材をBlank Value(初期値)を取った100ミリリットルの非イオン水が入っている大きなビーカーに入れます。
  6. 6:その混合物を約5分間良く振り、その後1時間放置します。
  7. 7:再度約5分間振ります。
  8. 8:その水のいくらかを清浄なビーカーに移し 電導度を測ります。

※ 最大許容電導度レベルについては 塗料メーカー、研削材メーカー、あるいは検査官に問い合わせてください。

補足:PSPCの規定値

PSPCではブラストあるいはグラインダ処理後のNAClに相当する塩分濃度は以下のように規定されています。
塩化ナトリウムは 50mg/m² 以下とすること。

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