超音波多層膜厚計の測定原理

一般のデジタル膜厚計は金属素地上の塗膜を測定しますが、超音波膜厚計は素地が樹脂やコンクリートであっても測定することが可能です。
しかしながら、測定の適否や測定値の精度に対する考え方は、一般の電磁式・渦電流式とは大きく異なる側面があります。極端な言い方をすれば、測定値が表示されたからと言ってそれをそのまま鵜呑みにはできません。
性能対コストの比が卓越していると言われるDeFelskoの最新機種を例に超音波膜厚計がどんなものであるかと測定のためのヒントをご紹介しましょう。

超音波膜厚計の測定原理

第1図 測定原理のイラスト

超音波によるパルスエコー技術の応用により非金属基板(木、コンクリート、プラスチック、複合物)や金属などの上の膜厚を非破壊で測定することができます。
超音発信素子から発せられた超音波パルスは、塗膜上に塗られたジェルを通してコーティング層内を進み、密度で異なる層の境界で反射します。 コーティング膜と素地との界面あるいは塗膜の層間から反射してくる超音波の到達時間を分析することで膜厚が測定されます。 反射して戻ってくるまでの時間は、境界までの厚み(プローブからの距離)の違いにより2つないし複数に分かれます。条件によっては多層膜の各層の厚みも測定することができます。
電磁式膜厚計や渦電流式膜厚計は、素地の特性に合わせるため素地調整(ゼロ点校正)を行なう必要がありますが、膜厚用の超音波膜厚計は塗膜により音速が異なるため、塗膜ごとの音速の校正が必要になります。

多層のそれぞれの膜厚が測定できるのですか?

第1図 測定原理のイラスト
第2図 測定値の表示画面(本例の膜厚値の単位はinchモード)

多層膜の場合、槽間で明瞭なエコーの反射が見られれば、3層まで各膜厚の測定が可能です。
2層の塗膜では、測定後に膜厚計のディスプレイには左図のような数値が表示されます。エコーの反射のピークが素地との界面および層間の界面となり、換算して膜厚値として表示されます。
なお、本例では単位はmilが使われていますが、一般的にμm単での表示も可能です。
本例では1層目も2層目も膜厚は1.5mils(約38.1μm)で、合計膜厚は3.0mils(約76.2μm)となっています。

エコーグラフ画面で確認をしてください

第3図 アドバンスモデルに準備されている3種の表示画面

膜厚値が表示されたら、画面をエコーグラフ表示に変更して意図した範囲の反射波を捉えているかを検証してください。

測定のヒント

  • 一般のデジタル膜厚計のように「素地の種類と塗膜の種類」を聞いて「計れます。計れません」がなかなか判定できないのが超音波膜厚計です。実際の対象物で試してみられることをまずお勧めします。
  • プローブを塗膜表面によく密着させることが肝心です。そうしないと塗膜表面からのエコーが邪魔して正確な測定が難しくなります。
  • 測定範囲を上手に限定してください。たいていの測定対象膜は均質ではないので、膜厚計は多くのエコーを聞くことになります。膜厚計は計測できる限界範囲内のすべての反射音を聞き、そして大きなエコーを層と層の間の界面あるいは塗膜と素地との界面と判断します。不要な反射音を除きノイズを少なくするため、測定膜厚範囲を上手に限定させることも有効になります。