端部やR(屈曲)部の近くは測定精度が低下します…要注意なケースがあります

平板状のものを測定しているときには気づきにくい膜厚計独特の特性やメーカーごとのクセの違いが、特異なポイントを測定すると浮き出てくるようです。
自動化が進み平板状ではなく、補正塗りが必要なコーナーや凹凸部の膜厚が問題にされる今日では、お手持ちの膜厚計のクセを一度ご確認された方が良いようです。

端部の影響を測定誤差で確認する

各メーカーの標準プローブを使用しました。
素地の端部は測定誤差が大きくなると言われています。そこで異なる3つのメーカーの標準プローブを用いてその影響を検証してみました。
第1図のように、試験片の端から20mm、10mm、5mmの位置で測定しました。なお端から20mmの位置で膜厚計の校正を行なっています。

第1図 端の影響の検証

渦電流式に比べて、電磁(電磁誘導)式膜厚計の場合には、端部に近いほど測定誤差が大きくなる傾向が強いので注意が必要でしょう。また、メーカー間の特性の違いもあるようです。端から5mmの位置では測定誤差は5%を超えるケースがあります。

R部の影響を測定誤差で確認する

各メーカーの標準プローブを使用しました。
次に異なる3つのメーカーの標準プローブを用いてR(曲げ)部の影響を検証してみました。
第2図はRの外側で、R部から20mm、10mm、5mmの位置で測定しました。なおRから20mmの位置で膜厚計の校正を行なっています。
第3図はRの内側で、R部から20mm、10mm、5mmの位置で測定しました。なおRから20mmの位置で膜厚計の校正を行なっています。

第2図 Rの影響(外側)
第3図 Rの影響(内側)

素地はすべて鉄です。Rの内側は標準プローブであるため、Rから10mmまでしか近づけません。その影響もあるのでしょうか、Rの内側よりも外側の方が大きな誤差になりました。Rの頂点近くは大きな誤差になるケースがあります。ボルト穴の際などを標準プローブで測定した場合には誤差に要注意です。

R部の外側の影響をミニプローブに変えて比較してみました。

2社のミニプローブを使用して計測してみました。どちらのメーカーともミニプローブの方が安定した結果になりました。
プローブ先端が入る入らないで測定の可否を判断するのは危険です。細かな個所ではミニプローブを使用されることが推奨されます。

第4図 ミニチュアプローブでR部を測定した場合
今回の試験の目的はどのメーカーが優れているかを示すものではありません。あくまで端部やR部が測定精度に影響を及ぼすのかどうか、あるいはその影響はメーカーにより差が生じるのかの可能性を示すのが目的です。本試験をもってどのメーカーが優れているかを論じるのは早急であると考えています。